保護犬体験記②|初めての夜とお風呂。小さな信頼のはじまり
動物愛護団体「エンジェルズ」さんでの出会い
2020年、私たちは動物愛護団体「エンジェルズ」さんで、
運命の出会いを果たしました。
スタッフの方に「どういう経緯でこちらに来たのですか?」と尋ねると、
「詳しくは言えませんが、行政から依頼を受けたんです」とのお返事。
おそらく繁殖犬として過ごしていた子たちが、
何らかの理由でレスキューされたのだろうと察しました。
初めて見た、うちのコの姿
トイプードル特有のくるくるした毛は、すっかり短くカットされていて
大人しくて、やせっぽちの姿。
面白いことなんて知らない。
嬉しいも楽しいも何も知らない。
そんな印象でした。
目を開けてても何も見ていないような
そんな無表情な顔がなんとも悲しい気持ちにさせるのでした。
みんながみんなそうではなく、陽気に吠えている子もいれば
ちょっと怯えた気持ちで吠えている子もいるし、
いろんな背景もあるだろうしいろんなタイプの子がいました。
うちのコ、の隣にいたトイプードルは、とても愛想が良く、
複数のご家族が気にかけている様子。
一方で、うちのコ、は寝てるだけで誰も特に興味を示していない様子でした。
この子を連れて帰ろう
私たちは決めました。
― 連 れ て 帰 ろ う ―
「このコ、を連れて帰りたいです。」
スタッフの方に私たちは申し出ました。
幸いライバルはいなく(それはそれでしょぼん)
手続きを済ませ、私たちはまた3時間かけて
家へと急ぎました。
帰り道の緊張
途中コンビニに寄って
犬のおやつを購入。
けれど緊張しているのか、うちのコ、はおやつをクンクンすることもなく、
車内でくつろぐこともなく、仁王立ちのまま前だけをじっと見つめていました。
その姿から、ただただ緊張しているのが伝わってきます。
ブレーキのたびに「おっとっと」と踏ん張る体を
私が横で支えていましたが
体をもたれてくることはありませんでした。
吠えるでもなく、噛みつくでもない
だけど懐いているわけでは無い。
私の知っているわんこ像とはかけ離れていました。
夫はなるべく急ブレーキにならないように運転をし、
私はなるべく優しく声をかけることしかできませんでした。
家についてから
家に着くと、娘が驚きと喜びで変なテンションに。
その姿を見て、うちのコも負けじとキョロキョロ。
緊張と不安が入り混じったような目で、
部屋の隅から私たちを見つめていました。
家族が「これからよろしくね」と声をかけるけれど
目はびっくりしたままで見つめてきます。
ただ、少し経つとウロウロしていろんなものをクンクンしている姿も見れて
ちょっと安心しました。
興味があるということが単純に嬉しかったのです。
――なんだか、きっと楽しくなりそう。
そんな予感がして、私も胸がいっぱいに。
まずはお風呂。
疲れているだろうと思いつつも、「ここはやっておきたい!」と
心を鬼にしてシャンプーしました。
細い体がますます目立ち、胸がぎゅっと締めつけられるようでした。
(今思えば、濡れるとみんな細く見えるんですよね…笑)
それでも、やさしく声をかけながら洗っていると、
うちのコも少しずつ安心してくれたようで、
目を細めて身を任せてくれました。
部屋に戻ると、またソワソワと落ち着かない様子。
知らない匂い、聞き慣れない音、そして新しい家族。
すべてが初めてで戸惑っていたのだと思います。
けれど、やがて小さくため息をついて横になりました。
その姿を見て、「あぁ、やっと少し安心できたのかな」と感じ
こちらもようやく落ち着くことができました。
ごはんも水も、トイレも、初日は何ひとつできませんでした。
無理に勧めず、ただそばで見守ることに。
きっとうちのコなりに、一生懸命“新しい生活”を
受け止めようとしていたのでしょう。
「焦らなくていいよ」「ここがあなたの家だよ」
――そんな思いを胸に、静かな夜を過ごしました。
初めての夜は、緊張と静けさに包まれて。
(気持ちが高ぶってしまいギラギラして寝れませんでした(笑))
それがうちのコ、登場の家族がそろった一日目でした。

